シンガポール美容室出店
2014年からシンガポール在住、2016年に美容室出店、2019年に2店舗目を出店致しました。シンガポールの日系美容室変遷や、これまでの経験をまとめてあります。
シンガポールの美容事情
シンガポーリアンは子供の頃の過密教育課程の影響から、日本人と比べると美容にあまり興味がない人が多い。日本では高校卒業〜就職までの期間髪型を自由にしている人が多くみられるが、シンガポールでは社会人以降、おしゃれを楽しむ人が多い。
シンガポール日系美容マーケットは2015 年以降急激に広がってきたが「自分でメンテナンスをしたくないから美容室に来ている」という意見がかなり強くある。
シンガポーリアンの普通はコテを持っておらず、ドライヤーを持っていない人も少数存在する。
仕上がりのイメージは特にないが、自分を変えてみたいから値が張る日系美容室に来たという顧客も多い。
「私はめんどくさがりだから、、、」とホームケアなどはしない人も多く存在しており、その象徴となっているのが、朝のMRTなどに髪が濡れたまま出勤している女性の姿である。
シンガポール日系美容室の変遷
2000年、日本の伝統ある美容室がシンガポール高島屋に出店。日本から自社美容師を駐在員として派遣し、日本人駐在員やシンガポールの富裕層をターゲットに運営。シンガポールにおける日系美容室はこのようにして登場しました。
この頃にできた日系美容室
→遠藤波津子美容室(閉店)
2005年、シンガポールの日系美容室や、海外で働いていた日本人美容師がシンガポールで出店するようになる。
日系美容室数約3店舗、日本人美容師数約10人
この頃にできた日系美容室
→Shunji Matsuo
2010 年、美容師一人当たりの月間売り上げ$20k が比較的簡単につくられていた。日系美容室の需要が急激に拡大。
日系美容室数約5店舗、日本人美容師数約20人
この頃にできた日系美容室
→Lim hair/KIZUKI、CLEO Hair(閉店)
2013 年、日本に母体を持つ企業/美容室や、投資家がオーナー兼経営者となり出店する美容室が増えた。労働VISAは1週間ほどで許可され事業拡大のスピードが早かった。
日系美容室数約10店舗、日本人美容師数約50人
この頃にできた日系美容室
→美容室ASH(現NAOKI Hair Dressing)
2015 年、美容師が投資家より出資を受け独立する美容室が急増。美容師がオーナーとなり単独で独立する日系美容室も初めて誕生した。日系美容室に初めて来店するシンガポーリアンも多く、美容マーケットは2010年よりは緩やかだが拡大していった。
日系美容室数約25店舗、日本人美容師数約80人
この頃にできた日系美容室
→Hair Studio Flamingo、Bump(閉店)
2018年、美容師による独立、低価格美容室の出店が始まり価格競争となった。東南アジア人スタイリストが働くローカルサロンのレベルが上がってきている、コリアンサロンの対等により日系美容室を選ぶ必要性が低くなった。
日系美容室約 50店舗、日本人美容師約 150 人
2020 年、COVID-19の到来により会社に体力のない美容室が潰れていった。ロックダウン(サーキットブレイカー)以降はバブル化し、最高額の売り上げをあげるスタイリスト、サロンが急増した。シンガポール国外からの参入障壁が高くなった影響から、残存者利益を得られるようになった一方、美容業界のローカル採用強化により VISA金額が一気に高騰。
現状のマーケットでは$10k(約¥85万)が最低月売り上げノルマ、$15k (約¥126万)売り上げて一人前の美容師とカウントされている。
日系美容室数約65店舗、日本人美容師数約200人
シンガポール日系美容室はレッドオーシャン?
シンガポール日系美容室変遷でも取り上げたように、2010年以降日系美容室の数は増え続け、シンガポール国内に日系美容室は約65店舗存在しており、ローカル美容室で働く日本人美容師を含めると、その数は約200人となっている現状です。
当地にて働く美容室オーナー、美容師に話を聞いてみると
- 日系美容室の数が増えてしまい、顧客獲得、あるいは顧客単価が頭打ちになってきている。
- 日本のメディアで、シンガポールのことが取り上げられることが多くなり、市場に可能性があるのではないかと、多くの企業/美容室がシンガポールに興味を持ち出した。
- シンガポールの景気が以前よりも伸びていないためお金を無尽蔵に使う人が減ってきた。
などが挙げられています。飽和状態なのではという声も聞こえてきました。とはいっても、超レッドオーシャンの東京や大阪の一部の地域と比べれば、まだまだ美容室の数は少ないのかもしれません。
シンガポールの人口は約560万人となっており、日系美容室の顧客となりえる人は約300万人くらいでしょうか。
日本は世界的にみると中間所得世帯が多く存在している国ですが、シンガポールは中間所得世帯が少なく、富裕層と低所得層にはっきりと分かれている傾向が強いです。そのため、シンガポールに存在している日系美容室の全ては、
- ローカルの富裕層
- 実家に住んでいる中間所得世帯の単身者
- 日本人を含めた他国の駐在員
向けのサービスを提供している事になります。
シンガポールの美容室料金
シンガポールにおける日系美容室の平均客単価は約$150(約¥13000)くらいでしょうか?男性が約$75(¥6100)、女性が約$200(¥16000)となります。日本人とシンガポーリアンを比べるとシンガポーリアンの方が一回の来店で使用する金額は高いですが、来店頻度は日本人の方が高いです。
日本人女性が2ヶ月に1回の頻度で美容室に来店するのに対し、シンガポーリアンは半年に1回、一年に1回という人も多く存在します。
日系美容室とその他美容室を比べると、日系美容室は比較的同じような値段のお店が多いです。そこを中間と捉え、日系サロンの価格帯よりも上にウェスタン(白人)系のサロン、高級層向けのローカルサロンがあり、日系サロンの価格帯よりも下に一般的なローカルサロンが位置しています。
企業としての年間売り上げ1ミリオン(8000万円)を超えている美容室は料金にGST7%(消費税)が加算されています。年間売り上げが1ミリオン以下の企業に関してはGSTの加算がありません。
それにより、
- 料金にGSTが含まれている美容室
- 料金にGSTが含まれていない美容室
- 料金にGSTの加算がない美容室
このように3つに分かれています。
日本と比べると、日系サロンの料金は比較的高くなっています。理由としては美容室の経費の大半を占める家賃、人件費、材料費(日本の商材の場合)が日本よりもシンガポールの方が高いことが挙げられます。美容室にかかってくる経費で日本よりもシンガポールの方が広告費、設備投資(ローカルの機材を使用した場合)などは安い傾向が挙げられます。
シンガポール日系美容室の出店地選び
ほとんどの日系美容室はシンガポールのCBD(central business district)エリアに密集しています。中心業務地区とも呼ばれ、市街地の中で、官庁・企業・商業施設などが集中する地区を指し、夜間人口に比して、昼間人口がとくに多くなります。
日系美容室の約8割はこのCBDエリアに存在しており、2、3店舗目にそれ以外のエリアへと進出していくのが通例となっています。
これまでに倒産/閉店していった日系美容室の割合はCBDエリア50%、その他の郊外50%となっていそうです。美容室の倒産理由は人員不足、売り上げ不足など。会社が潰れる理由は日本とさほど変わりがなさそうです。
「株主同士の方向性の不一致」
などはシンガポールの美容室ならではかもしれません。
ここには書ききれなかった情報を取りたい方、シンガポールへの進出でお困りの方は、FacebookメッセージやインスタDMにてご連絡ください。
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